PBP

2020-2021 Chetna Organic からの活動報告

今年度の活動は、新型コロナウイルスと悪天候の被害に対する緊急支援を実施しながら、活動を継続しました。インフラ整備が遅れた辺境にあり、政府の支援も十分に受けられないTelangana州とOdisha州の11の地域でプロジェクトが実施され、累計で314の村・16,079世帯の農家が有機農法へ転換しました。有機農業への転換により、環境と人体への被害防止と、農家の生産力向上と収入増加を目指しています。

1有機農法への転換支援

これまで、16,079世帯の農家へ対して有機農法転換支援が提供され、12,232世帯が有機農家として認証されました。今年度は、さらに1,000世帯の農家を受け入れ、持続可能な農業実践法(Sustainable Agricultural Practices)の導入を推進しています。

土壌の質は収穫量に大きな影響を与えています。しかし、農家の知識・技術不足と行政による不適切な農業施策が、土壌の質を酷く低下させていました。そのため、地域の土壌に適切であり、低コストで行うことができる様々な改善策(土壌改良・再生方法や、ミミズ堆肥・NADEP方式堆肥の作成方法、有機栄養物調整剤の使用方法、バイオマス苗の育成方法)が、チェトナによって農家に指導されました。

有機農法の研修の実施と規模の拡大は、より多くの農家の出費を減らし、収入を増加させました。今年度、各農家は1エーカー(約4,046平米)あたり約350㎏の綿花を収穫することができました。


整地

様々な堆肥の利用・研修・有機農家への農地見学は、農家の知識と技術を蓄積させる良い機会となり、彼らが有機農法転換をさらに進めるモチベーションを高めています。

農家は学んだことを農地で実践し、実際に、持続可能な農業実践法によって化学肥料や農薬にかかる農家の負担を大幅に削減することができました。

しかし、支援対象地域(Telangana州/Odisha州)では、新型コロナウイルス感染症の拡大と、長期間にわたる悪天候による作物へのダメージが影響し、多くの農家の収入が減少しました。

この事態に対処すべく、チェトナは困窮する農家を支援するための緊急プロジェクトを実施しました。


マスクの配布と啓発活動

新型コロナウイルスの影響を受けた
農家への緊急支援プロジェクト

a.出稼ぎ農家への緊急支援

インドの小規模零細農家の中には、農閑期の間、近隣の都市に移り住み、短期就労する人々がいます。新型コロナウイルスの発生後、インド政府により発令されたロックダウンで他の地域への移動に制限がかかりました。その結果、多くの出稼ぎ農家とその家族は職を失い、生活が不安定になりました。

チェトナは危機に直面している農家世帯を支援するために、緊急支援プロジェクトを実施しました。政府機関から収集したデータに基づいて経済的支援を必要とする農家を特定し、物資と生活費を提供しました。詳細は以下の通りです。

  1. 15,000世帯へのマスクの配布
  2. 感染対策を呼びかける啓発活動
  3. 失業で家族の生活を支えるのが困難な372世帯へ
    500インドルピーの現金給付
    (2020年時点で日本円にして750円相当)

上記の支援により、農家の家族は1週間分の食糧と医療品を購入することができました。さらに政府からも数日分の支援を受けることができ、彼らはこの困難な時期でも生活を送ることができました。



啓発活動

b.非遺伝子組み換え綿花種子の供給

新型コロナウイルスの影響とそれに伴う農家の失業により、多くの小規模農家がわずかな貯蓄を切り崩しながら生活を送らなければなりませんでした。想像を超える支出増加と収入減少で、多くの農家が次の農期までに種子の購入を間に合わせることができませんでした。この点を加味し、緊急プロジェクトでは農家が有機農業を継続して行えるように、非遺伝子組み換え種子を2,000世帯の農家に配布しました。

この非遺伝子組み換え種子の配布で、農家は政府から支給される遺伝子組み換え種子に頼ることなく、自分たちで有機農業を再開することができました。


種子の配布

1-1農家の研修と農地見学

チェトナは有機農法への転換支援で、農地の質を高め、農家の生産力向上と収入増加を見込んでいます。それを実現させるには、農家の知識と技術の蓄積、そしてモチベーションを高めることが重要になります。チェトナは農家の能力強化に力を入れており、有機農業に関するミーティング、オリエンテーション、研修の考案と実施を行ってきました。

研修に関して、農家がこれから自立して有機農業を行えるように、今年は100世帯の農家を対象にトレーナー研修、ファシリテーター研修が実施されました。研修を通して農家は害虫発生への予防策や、様々な種類の堆肥・肥料・植物エキスの作成方法、土壌内の水分保全方法などを学びました。さらに実践的な経験を積むために、研修を受けている100世帯を対象にエコセンターやCORCC (以下に各施設の説明) への見学を企画しました。



農家の研修と見学

1-2エコセンター

エコセンターでは、低コストで簡単に農地へ導入できる持続可能な農業実践法のモデルが展示されています。各地にあるエコセンターの存在は、周辺の村の農家も有機農法のことを学ぶことができるプラットフォームの役割を担っています。

展示されているモデルは、土壌と土壌内部の水分量の調整方法、野菜の栽培法、家庭菜園の運用方法、肥料・堆肥の作成方法を含み、幅広く有機農法を学ぶ機会で満たされています。今年度は、354世帯の農家がエコセンターを訪問し、その後、自らの農地で実践する姿が見られました。


堆肥の使用法展示

1-3CORCC の強化 ※ Chetna Organic Reserarch & Conservation Centerr

チェトナ有機農業研究・保全センター(CORCC)の施設整備が行われ、センターの機能が強化されました。

センターでは、現在の栽培方法を改善するために、灌漑施設を用いた効率の良い水の散布方法、間作としてのキビの栽培方法、有機農業に適切である種子の開発(品種改良)が日々試行錯誤されています。

さらに有機農業を継続できるよう、非遺伝子組み換え種(Non-GMO)の綿の種子の増殖や、 野菜・穀物・豆類の栽培、バイオマス苗床の育成、堆肥の生産が行われました。


綿花栽培を検査する農家

1-4シードバンクの設立

農地に適した種子を使用することは、農業を持続的に行う上で欠かせません。そのために多くの村では種子を保存し、次の世代に受け継ぎながら農業活動を継続してきました。しかし、過去に政府機関によって遺伝子組み換え種子を用いた農業が推進され、種子を保存する習慣が失われてしまいました。その結果、市場でも地域原産の種子が入手困難になり、現在いくつかの種が絶滅の危機に瀕しています。

この状況を改善するために、地域原産の種子の増殖と保存を目的としたシードバンクが設立されました。シードバンクはエコセンターとCORCCに併設されており、各シードバンクでは種子の増殖・保存活動の他、村のミーティングで地域原産の種子の有効性を呼びかける啓発活動を行っており、農家に再び種子保存の必要性を理解してもらえるよう働きかけています。


地域原産の種子展示
(2019年度の写真を使用)

1-5キビの間作

いくつかの地域では、従来からキビが主食として消費されていました。しかし、政府の食糧配給の方針でコメと似た作物が与えられるようになりました。地域の村人たちは慣れていない食べ物を消費することになり、それが原因で健康被害を引き起こしていました。

農家世帯の健康状態の改善、そして小規模で農業を行っている農家世帯がより多くの食糧を確保できるよう、キビの間作が導入されました。

昨年から200エーカー(約80万平米)の綿花畑でキビを栽培しており、今年も継続されました。今回の栽培では1エーカー当たり50〜60kgのキビが収穫されました。この収穫量で各農家は5,500インドルピー(2020年時点で日本円にして約8,200円相当)分の収入を得ました。


キビの間作


キビの精白

1-6多様な生産システムの推進

Telangana州とOdisha州に住む農家の家族は、綿花栽培以外で副収入を得る活動を行っています。ヤギの飼育、養鶏や家庭菜園が生産活動の一部に組み込まれ、農家の生活水準を底上げすることができました。
各活動の詳細は以下の通りです。

a.ヤギの飼育

ヤギは短期間で数を増やすことができ、飼育する世帯はヤギ肉や乳といった栄養のある食糧を得ることができます。今年度は、20世帯でヤギの飼育が始められました。PBP財団の支援でさらに80世帯用のヤギが貧しい家庭に提供されました。

コロナ禍の状況

新型コロナウイルスの状況下でもチェトナが動物へのワクチン接種を行い、今年度もこの活動を継続することができました。


ヤギの飼育

b.養鶏

今年度、50世帯を対象に、1世帯あたり25匹のニワトリを支給しました。各世帯では、ニワトリが産む卵と、鶏肉はタンパク質が豊富な食べ物として重宝されています。また農家世帯の女性たちは、市場で卵1個6インドルピー(9円相当)、鶏肉は1kg当たり550インドルピー(約800円相当)で販売し、副収入を得ることができました。

コロナ禍の状況

今年は新型コロナウイルスにより食料品の価格が高騰しているため、昨年度よりも高値で取引されたと報告されています。


養鶏

c.家庭菜園

野菜の消費を増やし、野菜の販売で副収入を得る手段として家庭菜園が50世帯で始められました。各世帯に様々な野菜の種子が支給され、トマト、唐辛子、オクラ、ナス、キュウリなどの栽培に成功しました。

家庭菜園を始めたことで人々は野菜を買うために遠くへ移動する必要がなくなりました。さらに市場で野菜を販売し、一か月間で450~550インドルピー(約800円相当)の副収入を得ることができました。


家庭菜園

1-7転換期間中である農家への創業支援

チェトナは有機農業への転換に関心を示し、事業の協力に積極的な農家が有機農法に転換できる機会を与えています。有機農家であることを示す証明書や、その他の必要物資が与えられ、今年度は新たに1,000世帯の農家が有機農法転換支援を受けました。

チェトナの技術チームが農家に寄り添った支援を行い、作物を守るのに必要なアドバイスを与えました。農家自身も持続可能な農業実践法の知識を深めるために、栽培期間前、栽培期間中、収穫期間後に研修を受けました。

昨年有機農業転換1年目であった全ての農家が、2年目の段階に移行することができました。


農家の内部監査

1-8土壌試験

土壌試験は、転換1年目と3年目に実施されます。今年は、転換1年目である50世帯の農家から土壌サンプルを収集し、土壌の現在の状況を知るために研究所で分析が行われました。分析結果として、土壌内のニトロゲンや硫黄などの養分不足が判明しました。

来年から様々な改善策をとる予定です。今年は、600リットルの液肥と800リットルの植物抽出液(作物の成長促進剤)の適用や豆の間作が行われ、スイッチグラス⁽¹⁾やおとり作物⁽²⁾も栽培されました。

(1) 水分を土壌内に蓄えることができる。またバイオアルコールの原料としても注目されている。
(2) 作物の病気を防ぐために“おとり“として発生源である胞子を引き寄せる作物。


土壌サンプル収集

2子どもたちの就学・復学・奨学支援

2-1奨学金支援

例年、教育を継続することが困難である学生に奨学金を支給しています。この奨学金で子どもたちは授業料を支払い教育を継続することができます。

コロナ禍の状況

政府の発令したロックダウンの影響で全ての教育機関が閉鎖されてしまったため、奨学金給付支援ができませんでした。しかし、農家の失業、それに伴う農家世帯の不安定な生活への緊急対策として政府は教育にかかる諸費用を助成しました。


奨学金を受け取る子ども
(2019年度の写真を使用)

2-2学校との架け橋 ブリッジスクールの運営

Telangana州内の子どもの退学率が高い地域では、学校から退学した子どもたちが通常学級に復学できるように学習を継続するためのブリッジスクールが運営されています。

コロナ禍の状況

新型コロナウイルスの影響で退学率が上昇したため、昨年よりも多くの子どもたちがブリッジスクールに通いました。
49人の男の子、 24人の女の子が学習に参加し、全ての子どもたちが大変な状況の中でも教育を受けることができ、来年から通常学級に復学する予定です。

ブリッジスクールとは ?

それまで読み書きをしたことがなかった子どもたちが、学校に通うようになっても授業についていけず、再び農業労働に戻ってしまうケースがあります。
こういった子どもたちの支援のための補習学校がブリッジスクールです。


ブリッジスクール

2-3補助教員の採用

学校では、生徒たちの学習意欲を高めるためにMAAD活動という課外授業を行う補助教員を採用しています。補助教員は、十分な研修を受けた後に、MAAD活動で音楽、芸術、農業、ダンスの授業を行います。その他にも学習についていけない子どもに向けて補修授業を開講します。

コロナ禍の状況

新型コロナウイルスにより学校が閉校したため、代わりに補助教員が農村で授業を実施し、子どもの教育を継続させるのに貢献しました。授業のおかげで再び学校に通う日まで学習が遅れることが少なくなります。

MAADとは?

子どもたちの個性を発揮させることを目指し、音楽(MUSIC)、芸術(ART)、農業(AGRICULTURE)、ダンス(DANCE)の授業がMAADです。この授業を通して、子どもたちにジェンダー平等、人権、子どもの権利、歴史や文化の大切さを教えることができます。


補助教員による授業

2-4学校コンテスト

子どもたちの心身の健やかな成長を促すために、学校ごとに文化祭が開催されています。生徒たちの住む地域にある伝統文化への関心に沿って、補助教師が課外活動を企画します。文化祭だけではなく、科学展や学校間交流会等も行われています。

コロナ禍の状況

新型コロナウイルスの影響で学校が閉校したため、これらの活動を行うことができませんでした。


学校間交流会
(2019年度の写真を使用)

2-5農家世帯の子どものライフスキル育成

農家世帯の中で綿花栽培以外の方法で収入を得たいと希望する人を募り、縫製の職業訓練を実施しました。今年は60人の女性が4グループに分かれてこの訓練に参加しました。3か月に及ぶこの職業訓練終了時には証明書が配られました。その後、17人の生徒が自分たちの村で事業を始め、毎月2,000~3,000インドルピー(約4,500円相当)の収入を得ています。


服を仕立てる女性

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